ほっとひと息、こころにビタミン vol.42
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
長い休み明けには意識的にペースダウン
夏休みが終わりました。自粛中心の生活を送った人も少なくないと思いますが、夏休みが終わると、また同じ日常に戻ることになります。私は、この時期になると決まって高校生時代を思い出します。長期の休みの終わりが近づいてくると、もとの日常生活にうまく戻れるかどうか不安になっていたからです。それまで休みでのんびりと過ごしていた自分が、夏休み前のように勉強ができるかどうか、心配でした。
そのように不安な気持ちに気付いたときには、勉強や仕事のペースを意識的に落とすようにしましょう。不安になると、以前のような状態に早く戻りたいと焦って、つい無理をしてしまいやすいからです。以前はこれくらいできていた、だからできて当然だと考えて、基準を高くし過ぎてしまっていることもあります。
しかし、長い休みが続いて本来のペースを維持できなくなっている可能性がありますから、すぐに元に戻ろうとしても無理な場合もあります。その結果、気持ちばかり焦って、結局は思うように物事が進まなくなり、やはりダメだったと落ち込むことになります。
こうしたことを避けるためには、ペースを落として現実に目を向け、何か問題があるかどうかを確認するようにします。もし問題があるようであれば、その問題に対処するために何ができるか、具体的に考えるようにします。
そのときには、できることから少しずつ、簡単すぎると思うようなレベルから少しずつ手掛けていくようにします。簡単なことでも一つできると、それが自信になって、もう一つやってみようという意欲が湧いてきます。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。