ほっとひと息、こころにビタミン vol.36
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
可能性と確率を区別する
3月は新年度を前に新入社員の事前研修や異動の内示、引っ越しなどと何かと変化が多い月です。特に今年は、新型コロナの感染拡大がいつ縮小するのか、先が見えず、不安になっている人もいるのではないでしょうか。
このように変化が大きく、先が見えないときに不安になって自分を守ろうとするのは自然な心理なので、不安になっているからといって心配しすぎないようにしてください。しかし、不安が強くなりすぎて思うように活動できず、せっかく持っている自分を発揮できなくなっては逆効果です。
不安になり過ぎないためには、可能性と確率を区別して考えるようにすると良いでしょう。逆に、可能性と確率を区別していないと、不必要に不安を感じ過ぎて萎縮することになります。
新型コロナの感染に関していえば、感染する可能性はありますし、重症化して命を落とす可能性もゼロではありません。しかし、可能性はあくまでも可能性で、それが起きる確率が高いかどうかは別問題です。その違いを意識しておかないと、必要以上に不安を感じたり、逆に不安を感じなさ過ぎたりすることになります。
例えば、公共交通機関に乗っているときに新型コロナに感染する可能性はありますが、手洗いやうがい、マスク着用などの感染症対策をきちんとしていれば、その確率はさほど高いとは思えません。ましてや、人がさほどいない公園に行って身体を動かしてストレス発散をしても感染する確率は低いでしょう。このように、可能性と確率を区別して考えながら行動して、心身の健康を保つように工夫してみてください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。