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ほっとひと息、こころにビタミン vol.34

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

今を大切に一歩一歩進んでいきましょう

新しい年が始まりました。いつもなら、新しい年を迎えると気持ちが引き締まり、新年に向けての思いが湧いてくるものです。しかし、新型コロナウイルスの感染者数が増える中、前向きになれない人も少なくないでしょう。

感染を避けるために自宅にいることが増えると落ち込みがちになり、一歩踏み出そうという気力が湧きにくくなります。しかし、そこで諦めてしまっては先に進むことができません。「どうせダメだ」と考えて何もしなければ変化は起こらず、「やっぱりダメだった」と考えることになります。何もしないからダメなのに、まるで自分の予言が当たったように思えて、元気がなくなっていきます。

そうしたときには、あまり先を見過ぎないで、一歩ずつ足を踏み出すように意識しましょう。実際に歩いているとき、慣れない道で足を踏み出すときには足元に意識を向けるはずです。そうしないと、思いがけない段差があって、足を踏み外すことがあるからです。このような意識は、気持ちを切り替えて先に進むときにも大事です。

私たちは悩んでいるとき、いつの間にか過去のことをクヨクヨ考えています。しかし、過去は変えることができません。逆に、先に目を向けて不安になっていることもあります。いずれの場合も、今に目が向いていないのです。それでは、現実に目を向けた具体的な手立てを考えることができません。

そうしたときこそ、今に目を向けてひとつひとつ先に進んでいくことが大事です。昔から言われる「年忘れ」「年始め」という言葉には、そうした知恵が込められていると、私は考えています。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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