ほっとひと息、こころにビタミン vol.32
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
冬の閉じこもりに要注意
「冬季うつ病」と呼ばれる病気があります。これは文字通り、冬に発症するうつ病で、日照時間が短くなることが原因ではないかと考えられています。そのために、治療では高照度の光を照射する方法が使われます。
ただ、こうした状態が日本でも起こるかというと、必ずしもそうではないようです。ずいぶん前に地域調査が行われたのですが、そうした状態が存在していることを確認できなかったのです。おそらくこれは、ノルウェーやスウェーデンなど、緯度が高く、冬には1日の大半が夜になるような国で見られる状態なのでしょう。
そうはいっても、日本でも、冬になると気持ちがふさぎ込みがちになる人がいるのは確かです。これは、日照時間が短くなるだけでなく、寒さのために家に閉じこもりがちになるためではないかと考えられます。家に閉じこもりがちになると、どうしても運動量が減ってきます。
先月号でも紹介しましたが、スポーツにはこころの元気を高める効用があります。体を動かすことで考え込まないで済みますし、気分転換にもなります。脳機能自体も活性化するようです。ですから、寒いからといって家に閉じこもりがちになると、こころの元気がなくなってきます。
特に、家の中で背中を丸めていると、ますます気持ちはふさぎ込んできます。姿勢によって気分が変わることはよく知られています。ですから、寒くても少しは外に出るようにしてください。家の中でも外でも、背筋を伸ばして笑顔で生活するようにすると、こころが元気になってきます。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。