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ほっとひと息、こころにビタミン vol.29

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

自分らしさを取り戻す

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、これまでとは違う「新しい生活様式」が提案されるなど、特に都市部を中心に生活形態が変わってきています。このように自宅や仕事上の環境が変わってくると、ストレスを感じている人も増えてきます。

こうした状況でストレスを感じるのは、自分が自分の意思で何かを作り出そうとしているのではなく、新型コロナウイルスや社会の流れのなかで一方的に生活様式を押しつけられ、主体性を奪われているように感じるためです。そうしたときには、もう一度、自分らしさを取り戻すことが役に立ちます。

その方法の1つとして、趣味があります。以前、都心で働いている複数の人から畑仕事やガーデニングをすることで、こころを癒やしているという話を聞いたことがあります。一日中ビルに囲まれて仕事をしていると、それだけで心身の疲れを感じやすくなります。

そのようなときに、外に出て自然に触れていると、自分本来の感覚が呼び戻されるように感じられるといいます。もちろん、マンションのベランダや自宅の庭で草花を育てて、自然と触れ合うのも良いでしょう。自分がまいた種から花が咲いたり、果物や野菜が育ったりするという体験は達成感につながります。

このように自分を取り戻すことは、家の中でもできます。室内で体を動かしたり、これまで読めていなかった本を読んだり、観たかった映画を観たりしてもいいでしょう。

新しい日常のなかに自分を取り戻す新しい体験を少しずつでも入れることができれば、体も心も健康になってきます。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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