ほっとひと息、こころにビタミン vol.27
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
大切な人の悩みに気付く
新型コロナウイルス感染症の影響で、ストレスを感じている人が増えています。ウイルスに感染するのではないかという不安があるのはもちろんですが、同時に、仕事が思うように続けられなくなったり、在宅勤務で人との交流が減ったり、休校になった子どもの世話で今までのような生活が続けられなくなったり、一気に現実的なストレスが押し寄せてきているためです。
ストレスが長引くと、心身に不調が出てきて、今までの生活が続けられなくなることもあるので注意が必要です。そのとき、悩んでいる本人からSOSが出せれば良いのですが、精神的なストレスについて人に相談することに抵抗感を持っている人は少なくありません。そのため、自分のなかだけで悩みを抱えて、ますますつらさが増してくることになります。
しかも、そうした精神的な悩みは外から見えないだけに、周りの人もなかなか気付かないこともあります。心配なときには、外から見える態度や行動の変化に目を向けるようにすると良いでしょう。
大切な人が、いつもと違って怒りっぽくなったり、口数が少なくなったりしていないでしょうか。眠れなくなったり、食欲が落ちたりもします。仕事や勉強に集中できず、凡ミスが増えたり、成果が上がらなくなったりするときも要注意です。ストレスは身体にも影響して、頭痛や腰痛、倦怠感などの不調として現れることも少なくありません。
こうした変化が続いて、徐々に良くない方向に進んでいるときは、心配な兆候を具体的に伝えながら、専門の医療機関に相談することも含めて、一緒に対応策を考えていくようにしてください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。