ほっとひと息、こころにビタミン vol.13
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
不安を不安に感じない
新年度が始まりました。この時期は、それまでとは違った新しい環境で生活するストレスがからだやこころに現れやすいので気をつけるようにしましょう。
私たちは、変化に対応するのが苦手です。新しい場所に移ったり、慣れない仕事を担当することになったりすると、その場所で、その仕事をこなすことができるか不安になります。そのようなとき、不安に対して不安を感じないようにしてください。不安になった自分を感じて、こんなに自信が持てない自分は情けないと自分を責めたり、もっと自信を持って仕事や勉強に取り組むようにしなくてはと自分を励ましすぎたりすると、こころが疲れてきます。
前回も書きましたが、慣れない環境で不安になるのは自然なこころの反応です。そのように自然に反応できている自分のこころの力を信じてください。その上で、心配があるとしたら何が心配か、具体的に考えて対応策を考えるようにします。それも、自分だけで考えるのではなく、同僚や先輩、家族など、周りにいる人たちに相談しながら、対応策を考えていくようにすると良いでしょう。自分一人で考え込まないことです。
私たちは悩みが出てくると、つい自分の頭の中だけであれこれ考えてしまいます。しかし、頭の中で考えていても良いアイデアが浮かばないこともよくあります。そうしたときには、考えるのをいったんやめて、身体を動かすなど、好きなことをして気分転換を図るとよいでしょう。悩んでいるときに一度考えるのをやめることや、楽しいこと、やりがいのあることをすることで、新しいアイデアが浮かんでくることはよくあります。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。