ほっとひと息、こころにビタミン vol.9
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
「反応」ではなく「選択」を
師走を迎えて忙しさが募ると、ついイライラして人にあたってしまうことがあります。そのために人間関係がギクシャクしたり、作業が遅れてしまったりして、良くない結果になることもあります。それでは逆効果です。
私たちがイライラしたり、腹が立ったりするのは、こうなって欲しいと期待しているからです。その期待が思うように満たされないから、裏切られたように感じて腹が立つのです。だからといって、その自分の感情を相手にぶつけてしまうと、相手も反発してしまいます。自分のネガティブな感情は、相手からも同じネガティブな感情を引き出します。
こうしたときには、感情に流されないで、ひと息入れるようにしてください。感情が強くなり過ぎると、自分の思いに目が向いてしまって、全体を見ることができなくなります。ゆっくり息をして自分を取り戻し、全体に目を向けるようにするのです。
その上で、自分が期待していることは何なのか、それを実現するためにどのように行動すれば良いかを考えてみてください。そのとき、考えたことを紙に書き出して、少し時間をおいて見直してみると良いでしょう。考えを書き出すことで、そして少し時間を置くことで、冷静になれます。
そのときに書き出す行動は、1つだけに絞らないことも大切です。いくつか考えてみて、その中から良い結果につながる可能性が高い行動を1つ選んで実行に移すようにした方が良いでしょう。感情にまかせて「反応」するのではなく、いくつかの可能性の中から「選択」する余裕を持つことができれば、イライラした感情を自分のために生かすことができるようになります。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。