ほっとひと息、こころにビタミン vol.2
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
笑顔でこころもからだも元気に
職場や学校の環境が変化した新年度から少し時間が経って、環境に馴染んできた人も少なくないと思います。その一方で、なかなか新しい人間関係や仕事に馴染めず、心ひそかに悩んでいる人もいるでしょう。そうした人は、まず、明るく笑顔で挨拶することからはじめてはどうでしょうか。
たったそんなことで人間関係が変わるのだろうかと疑問をもつ人がいるかもしれませんが、笑顔というのは人間関係をよくするスーパーパワーをもっています。じつは、笑顔など温かい気持ちは相手の人に伝わって、相手の人の表情が和らぎます。逆に、厳しい表情で相手の人に接すると、相手の人も厳しい表情になって、関係がギスギスしたものになってきます。
しかも、お互いに明るい表情になると、その場の雰囲気が変わってきて、温かくなります。そうすると気持ちも軽くなるのですが、それは雰囲気だけの影響ではありません。笑顔でいると、受け取る情報をプラスに感じるようになるのです。
意識的に笑顔を作って漫画を読んだときと、しかめ面をして同じ漫画を読んだときとで、面白さが違ってくるという研究結果があります。笑顔で読んだときの方が、面白いという評価が明らかに高かったのです。じつは、笑顔で生活すると長生きするという研究もあります。
まさに「笑う門には福来たる」です。笑顔で挨拶をすることで、こころもからだも元気になれるとすれば、それに越したことはありません。ぜひ、この簡単な健康法を試してみてください。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。